サブリースの功罪

一時期報道などで大きく取り上げられ話題となった「サブリース」。

「サブリース問題」なんて扱われ方をされ、さも諸悪の根源のように言われていましたが、結局のところどういうものなのでしょう?

そしてサブリースの何が問題なのでしょうか?

 

 

サブリースとは?

そもそもサブリースとは、物件オーナーの代わりに、不動産業者が一定の期間、一定の家賃を保証しつつ管理運営を行うものです。

アパートやマンションを一棟丸ごと借り上げる場合もありますし、区分マンションの一部屋単位でのサブリースも存在します。

 

つまりは、「転貸」です。

物件オーナーから不動産業者が一定の金額で借り上げ、オーナーに払う賃貸料よりも高い家賃で入居者に転貸します。

その差額がサブリースを提供する不動産業者の儲けという訳です。

 

不動産投資における最大のリスクとも言える「空室リスク」を完全に回避できる(と思わせる)仕組みです。

通常であれば空室になった場合は、当たり前ですが家賃は入ってきません。それでもローンや管理費などの支払いは毎月ありますから、空室期間中は自己資金を手出しして穴埋めしなければならない状態となります。

空室期間が長引けば、赤字が積み重なり、やがて深刻な事態となるであろうことは容易に予想がつきます。

物件オーナーにとって、満室であろうと空室であろうと家賃が保証されるというこの仕組みを非常に魅力的に感じるのは当然のことです。

 

 

 

サブリースの問題点

では、一体何が問題なのでしょうか?

シンプルにまとめると、私は大きく2つの問題点に集約されると考えています。

 

①契約条件

多くの場合、不動産業者によって一方的に条件が変更できてしまう契約となっています。

つまり、当初支払われていた家賃が、途中で減額されてしまう可能性があるということです。

長期間保証されているのは、家賃を「支払う」ということだけであって、その「額」までは保証されていないのです。

当初の保証家賃を前提条件として収支計画を立て、ほぼフルローンの余裕がない状態で購入していた場合には、条件変更によって収支が一気に赤字へと転落する可能性があります。

不動産投資で利益を得るどころか、毎月の赤字を自らの資金で穴埋めしなければならないという悲惨な状況に陥ります。

 

ここでさらに問題なのは、将来的に契約条件が変更される可能性について、全く説明されていない、もしくはほとんどその可能性がないかのように説明され、物件オーナーがそのリスクをきちんと理解していない場合が多かったという点です。

 

また、退去が発生した場合に、次の入居者を募集するための期間として、2~3ヶ月間は家賃の支払いを受けることができないという「免責期間」が設定されている場合もあります。

これについても、きちんと理解しリスクとして織り込んでいる物件オーナーがどれほどいるのか疑問です。

 

 

 

②物件価格

ほとんどの場合、サブリースを提供する不動産業者から物件を購入することになりますが、その際には必ずと言っていいほど魅力的な収支計画を提示されます。

保証家賃を前提としての計画となりますが、その金額を高く設定すれば、相対的に物件価格を安く見せることが可能なのです。

仮に物件価格が高いと感じても、「この家賃が保証されるなら収支上問題ないだろう」という間違った思考に陥りがちです。

 

もっと悪いのは、不動産業者と建築業者がグルになっているパターンです。

サブリース契約を前提に、相場よりも高い金額でアパートを建てさせます。

相場を知らない物件オーナーは、当初保証家賃での収支計画に魅力を感じ、その計画に乗ってしまいます。

 

で、しばらくすると何だかんだと理由をつけて家賃を減額します。最悪の場合、サブリース契約が打ち切られるケースもあるようです。

収支が赤字となり、困った物件オーナーは売却を検討しますが、そもそも相場よりだいぶ高い金額で購入(建築)してしまっているため、大幅な売却損となり、売却額でローンを完済することができません。つまり、さらに手出しをして現金を積まない限り損切りすらできないということになります。

こうなるともう完全に「詰み」です。

 

ちなみに、儲かった建築業者から不動産業者へと、裏でキックバックが渡っているなどということを、無知な物件オーナーが知る由もありません。

 

そしてここに、書類の改ざんなどお構いなしに、他行よりも高金利で貸しまくるイケイケドンドンな銀行が絡むと、最悪のスキームが完成します。

年収や預貯金額などの資料の改ざんにより、本来なら融資を受けることのできない属性や年収の方が物件オーナーとなっているのですから、損切りのための自己資金もなく、かと言って毎月の赤字収支に耐えられる訳もなく、前述のような「詰み」の状況となる人たちが続出します。

 

これ、そもそも不動産業者に入居者募集のスキルがなく、当初からまともにサブリースを運営するつもりなど無かったとしたらどうでしょうか?

不動産業者は(計画的に?)経営破綻して終わりですが、物件オーナーには入居者の入らない物件と、高額のローンだけが残ります。

 

手数料やキックバックで儲けた不動産業者、高額の建築費で儲けた建築業者、高金利で儲けた銀行、その全てのしわ寄せは無知な物件オーナーが背負う羽目に・・

 

どこかで聞いたことのあるような話ですね。

 

 

 

 

仕組みを正しく理解する

「こんなはずじゃなかった・・」

「騙された・・」

サブリースの被害者(と主張する人)たちが必ず口にする言葉です。

もちろん、物件オーナーを意図的に騙すような勧誘をしていたり、法律に違反するような行為があったなら、それは言語道断です。

 

一方それに対し、「事前によく確認しなかった本人も悪い」という意見もあります。

こちらの意見も一理あるとは思います。

 

とはいえ、ごく一般的な方が一から専門的な知識を身につけ、冷静に正しい判断を下すというのは至難の業です。

さらに百戦錬磨の営業マンと対峙して有利に交渉を進めることなど、望むべくもありません。

ですので私個人的には、どうしても被害に遭った物件オーナーに同情する気持ちの方が勝ってしまいます。

 

 

 

サブリース自体は決して悪いものではありませんし、ましてや違法なものでも何でもありません。

上手に活用できれば、物件オーナーの心強い味方となる仕組みです。

しかしまず絶対条件として、その仕組みを正しく理解する必要があります。

そして契約を精査し、物件価格や保証家賃が適正かどうかを判断することも必要です。

 

ただし、この作業には専門的な知識が必要となります。

さらに物件価格や家賃の相場にも精通していなければなりません。

なかなかハードルが高いというのが現実ではないでしょうか。

 

 

投資家に専門的な知見と適切なアドバイスを提供し、「不動産投資で失敗する人をゼロにする」ことが私たちのミッションです。

弊社の存在意義はここにあると考えています。

WRITER / 執筆者

株式会社マイプロ 代表取締役

岡本 真治

1977年生まれ/神奈川県出身・福岡市在住
宅地建物取引⼠ / 2級ファイナンシャル・プランニング技能⼠ / ⼀般社団法⼈ ⽇本マンション投資アナリスト協会 会員
自身の失敗から得た教訓を生かし、「お客様に失敗させないこと」を第一に考えるコンサルタント。

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